京都の「五山送り火」とは?|「大文字焼き」ではなく「送り火」と呼ぶ理由、歴史と五つの山

query_builder 2026/08/14
ブログ


京都の夏を代表する風景の一つに、8月16日の夜、京都の山々に浮かび上がる大きな火があります。

最も有名なのは、東山・如意ヶ嶽に灯される「大」の文字。

旅行で京都を訪れた方の中には、「大文字焼き」と呼ばれることもあるこの行事ですが、京都では一般的に「五山送り火」または「送り火」と呼ばれています。

では、なぜ「大文字焼き」ではなく「送り火」なのでしょうか。

そして、なぜ京都では毎年8月16日に山に火を灯すのでしょうか。

今回は、京都の夏の風物詩である五山送り火について、その意味や歴史、五つの送り火、そして私たち「ますます増田」とのつながりについてご紹介します。



「大文字焼き」ではなく「送り火」


まず知っていただきたいのが、京都ではこの行事を一般的に「大文字焼き」とは呼ばないということです。

「大文字焼き」という呼び方は、全国的には知られている表現ですが、京都では「大文字」や「五山送り火」「送り火」という呼び方が一般的です。

なぜなら、この火は何かを「焼く」ためのものではないからです。

「送り火」という名前の通り、これはお盆に迎えたご先祖の霊、つまり精霊を再びあの世へお送りするための火とされています。(京都市⁠)

そのため、「大文字焼き」という言葉よりも、「五山送り火」という名称の方が、この行事が持つ本来の意味を表していると言えるでしょう。



なぜ8月16日に送り火をするの?


日本では古くから、お盆にご先祖の霊を迎えるという文化があります。

お盆の間、家族とともに過ごしたご先祖の霊を、最後に再びあの世へお送りする。

そのために灯されるのが「送り火」です。

京都の五山送り火も、基本的にはこの精霊送りの意味を持つ行事です。

京都市によれば、五山送り火は仏教が庶民の間に広く浸透した室町時代以降に始まったと考えられています。(京都市⁠)

一方で、「誰が、いつ、最初に始めたのか」という点については、実ははっきりと分かっていません。

空海が始めたという説。

室町時代の足利義政に関係するという説。

江戸時代初期の公家・近衛信尹に関係するという説。

さまざまな説がありますが、確実な史料によって一つに定めることはできません。京都市公式観光サイトでも、こうした起源については俗説が多く、確実なことは分からないと説明されています。(【京都市公式】京都観光Navi⁠)

だからこそ、五山送り火には長い年月の中で京都の人々が受け継いできた、民間信仰やお盆の文化が深く関わっていると考えられています。



五山送り火は「五つの送り火」



「五山送り火」という名前の通り、京都盆地を囲む山々に五つの送り火が灯されます。

東から西へ順番に、

大文字

妙法

船形

左大文字

鳥居形

の五つです。

「妙法」は「妙」と「法」の二つの文字ですが、一組として数えられます。

京都市公式観光Naviによると、これら五つの送り火は8月16日の夜、相前後して点火されます。(【京都市公式】京都観光Navi⁠)




① 大文字|東山・如意ヶ嶽

ブログ

最も有名なのが、東山の如意ヶ嶽に灯される「大」です。

毎年8月16日の午後8時に点火され、五山送り火の最初を飾ります。(京都市)

京都市内から非常に見つけやすく、京都を代表する夏の風景として知られています。

この「大文字」に使われる火床には、護摩木が焚かれます。

護摩木には名前や願いなどが書かれ、先祖の霊を送るとともに、無病息災などを願う信仰も受け継がれています。(【京都市公式】京都観光Navi)

② 妙法|松ヶ崎

ブログ

次に灯されるのが「妙」と「法」です。

松ヶ崎の西山と東山にそれぞれ「妙」「法」の文字が浮かび上がります。

二つ合わせて「妙法」となります。

仏教と深く関わる言葉であり、五山送り火の中でも特徴的な形の一つです

③ 船形|西賀茂

ブログ

西賀茂の船山に灯されるのが「船形」です。

文字ではなく、船の形が山に浮かび上がります。

船という形には、精霊を彼岸へ送り届けるという意味を重ねて考えることもできます。

京都の山に大きな船が浮かぶように見える姿は、五山送り火ならではの景色です。

④ 左大文字|大北山

ブログ

「左大文字」は、金閣寺周辺の大北山に灯されます。

東山の「大文字」と同じ「大」の字ですが、別の送り火です。

京都の西側から見える「大」であることから、一般的に「左大文字」と呼ばれています。

⑤ 鳥居形|嵯峨・曼荼羅山

ブログ

最後に灯されるのが「鳥居形」です。

嵯峨鳥居本の曼荼羅山に、鳥居の形が浮かび上がります。

文字ではなく鳥居の形をしているところも、五山送り火の面白いところです。

五つの送り火は、それぞれ異なる形をしていますが、すべて京都の人々によって大切に受け継がれてきた送り火です。(【京都市公式】京都観光Navi)

五山送り火は、なぜ山に灯されるのか?

これについても、確実に一つの答えがあるわけではありません。

京都の公式観光情報では、送り火そのものは、お盆に戻ってきた精霊を再び冥府へ送る仏教的な行事とされ、松明の火を空に投げ上げて、空を行く霊を見送る風習が山の送り火へと変化したという説も紹介されています。(【京都市公式】京都観光Navi)

また、京都文化遺産の解説では、室町時代以降に行われていた「万灯籠」などの灯籠行事との関係も指摘されています。

祖先の霊を供養し、火によってその道を照らしながら送り出す。

そうした文化がさまざまな形に変化し、山の斜面に火床を設けて大きな文字や図形を描く現在の送り火につながったと考えられています。(京都の文化遺産)

五山送り火が今の形になったのはいつ?

現在の五山送り火がいつ完成したのかについても、明確な一つの年代を示すことは難しいとされています。

ただし、江戸時代初期にはすでに「大文字」「妙法」「船形」について記録が残されており、1665年の『扶桑京華志』には「左大文字」の記録も見られます。(京都市)

つまり、少なくとも江戸時代には、京都の夏を代表する行事として送り火が行われていたことが分かります。

長い歴史の中で形を変えながらも、京都の人々が大切に守ってきた文化なのです。


「きれい」だけではない、送り火の意味

現代では、五山送り火を美しい京都の夜景として楽しむ方も多いと思います。

もちろん、夜空に浮かび上がる火の美しさは、この行事の大きな魅力です。

しかし、本来の意味を知ると、見え方は少し変わります。

あの火は、単なる観光のためのイルミネーションではありません。

お盆に帰ってきたご先祖を送るための火。

家族の無事や健康を願う火。

そして、長い年月、地域の人々が守り続けてきた火です。

京都文化遺産の公式解説でも、送り火を「きれい」「すごい」と見るだけではなく、その背景にある祖霊への祈りを感じ、静かに手を合わせることの大切さが紹介されています。(京都の文化遺産)

「ますます増田」でも、8月は送り火を料理に

私たち「ますます増田」も、京都の季節や文化を料理の中で感じていただくことを大切にしています。

そのため、8月のおまかせコースでは、京都の五山送り火にちなんだ一品をご用意しています。

単に「大文字」を料理の形にするということではありません。

京都で暮らす人々が長い間大切にしてきた夏の文化。

お盆。

ご先祖を送るという意味。

そして、夏の終わりを告げる送り火。

そうした背景を知っていただいた上で料理を味わっていただくことで、一皿の料理が少し違って感じられるかもしれません。

私たちは、料理を通して京都の文化や季節も一緒に楽しんでいただきたいと思っています。

お盆のご家族との食事にも「ますます増田」を

五山送り火が行われる8月16日は、お盆の時期でもあります。

「ますます増田」はお盆期間中も営業しています。

帰省されたご家族と一緒に食事をする場所としても、ぜひご利用ください。

普段は離れて暮らしているご家族が京都に集まり、季節の日本料理を囲みながらゆっくり話をする。

そんな時間も、京都で過ごす夏の大切な思い出になるのではないでしょうか。

ご家族とのお食事だけでなく、京都へ帰省した友人との食事や、遠方から来られた大切な方をおもてなしする場としてもご利用いただけます。

8月16日には、料理を少し中断して送り火をご覧いただくことも

そして、「ますます増田」ならではの楽しみがあります。

当店の前の通りを南へ下り、旧大宮通と中立売通が交わるあたりから東方面を望むと、東山・如意ヶ嶽に灯る右大文字を見ることができます。

そのため、8月16日の送り火の時間には、タイミングが合えば、私たちからお声がけして、コース料理を少し中断し、お客様にも送り火をご覧いただくことがあります。

料理を一度止めて、皆様で夜空を見上げる。

その時間もまた、京都でしか味わえない食事の一部だと思っています。

もちろん、天候や視界などによって見え方は変わります。

それでも、料理だけではなく、その日に京都で起こっていること、その季節、その時間まで含めて楽しんでいただきたい。

それが私たちの考える日本料理の楽しみ方です。

料理と一緒に「京都の季節」を味わう

日本料理には、季節を料理にするという考え方があります。

春には春の食材。

夏には夏の食材。

秋には秋の食材。

冬には冬の食材。

しかし、季節というのは食材だけではありません。

京都の行事。

祭り。

風景。

香り。

暮らし。

そして、人々が長く受け継いできた文化。

それらもまた「季節」の一部です。

だからこそ、私たちは8月の料理の中に、五山送り火という京都の夏の文化も取り入れています。

料理を召し上がりながら、

「なぜ京都では8月16日に火を灯すのか」

「なぜ大文字焼きではなく送り火と呼ぶのか」

「この五つの火にはどんな意味があるのか」

そんな話を知っていただくことも、日本料理を楽しむ一つの方法だと思っています。

京都の夏の夜、送り火を見ながら

五山送り火は、毎年8月16日の夜に行われます。

京都の街を囲む山々に次々と火が灯り、夜空に大きな文字や形が浮かび上がります。

その光景はとても美しく、京都を訪れる方にとって忘れられない風景になるでしょう。

けれど、その火には、長い歴史と、先祖を思う人々の祈りがあります。

美しいから見る。

それだけではなく、

「この火は、誰かを送るために灯されている」

という背景を少し知ってから見ると、送り火の見え方も変わるかもしれません。

京都の文化を、料理と一緒に

「ますます増田」では、京都・西陣という場所で日本料理店を営むからこそ、料理だけではなく、京都の文化や季節も一緒にお伝えしたいと考えています。

8月には五山送り火にちなんだ料理。

お盆には、ご家族が集まる食事の時間。

そして8月16日の夜には、タイミングが合えば料理の途中で皆様と夜空を見上げ、東山の「大文字」を眺める。

それも、京都・西陣で食事をするからこそできる体験の一つです。

京都の歴史を知り。

季節を感じ。

料理を味わい。

大切な人と語らう。

そんな一夜を過ごしていただければと思います。

五山送り火の夜に、京都・西陣で

京都の五山送り火は、単なる夏の風景ではありません。

お盆に迎えたご先祖を送り、家族の無事を願い、地域の人々が長い時間をかけて守り続けてきた京都の文化です。

「大文字焼き」という言葉ではなく、「五山送り火」

その名前の意味を知るだけでも、この行事が少し身近に感じられるのではないでしょうか。

そして8月、京都を訪れる機会がありましたら、ぜひ西陣にも足を運んでみてください。

歴史ある町家や西陣織の文化に触れながら、季節の日本料理を楽しむ。

そして8月16日には、夜空に浮かぶ送り火を眺める。

「ますます増田」では、そんな京都の季節そのものを、料理とともに感じていただける時間をご用意しています。

お盆に帰省されたご家族とのお食事にも、大切な方との京都旅行にも。

京都・西陣の町家で、季節の料理を味わいながら、京都の夏を感じてみてはいかがでしょうか。

----------------------------------------------------------------------

ますます増田

住所:京都府京都市上京区旧大宮通中立売上る庇町187−1

----------------------------------------------------------------------