「お竈さん」とは?京都の暮らしと料理文化を支えてきた竈の歴史|ますます増田のお竈さん

query_builder 2026/08/19
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京都の料理店を訪れたとき、厨房や店内に少し珍しいものを見かけることがあります。

白く美しく仕上げられた、大きな竈。

京都では、昔から竈を親しみを込めて「お竈さん(おくどさん)」と呼んできました。

現代の家庭では、ガスコンロやIH、炊飯器などが当たり前になり、日常生活の中で竈を見る機会は少なくなりました。

しかし京都では、今でも伝統的な料理文化を受け継ぐ料理店などで、竈が大切に使われています。

実は、私たち「ますます増田」にも、お竈さんがあります。

そして、このお竈さんは、私たちにとって単なる調理器具ではありません。

京都で料理を学んできた店主の修業時代の記憶と、現在の料理をつなぐ、大切な存在でもあります。



「お竈さん」とは?


「お竈さん」とは、薪や炭などを燃料として火を起こし、鍋や釜をかけて調理するための竈のことです。

特に京都では、竈を単に「かまど」と呼ぶだけではなく、親しみと敬意を込めて「おくどさん」と呼ぶ文化がありました。

「竈(くど)」という言葉に丁寧な「お」を付けたものと考えられています。

京都の町家では、台所に竈が設けられ、そこでご飯を炊いたり、煮炊きをしたりしていました。

つまり、お竈さんは昔の京都の暮らしにおいて、毎日の食事を支える中心的な場所だったのです。



なぜ「お竈さん」と呼ぶようになったの?


「お竈さん」という呼び方には、京都らしい文化が表れています。

日本では昔から、火や食べ物、台所など、生活に深く関わるものを大切にしてきました。

特に竈は、単なる調理設備ではありません。

家族が食べるご飯を作る場所であり、家を支える火がある場所でした。

そのため、単純に「竈」と呼ぶのではなく、「お」を付けて大切に扱う感覚が生まれたと考えられています。

京都では、こうした日常生活の道具に対しても、どこか人のように親しみを持って接する文化があります。

「お竈さん」という言葉には、

毎日の暮らしを支えてくれる火への感謝。

食事を作る場所への敬意。

そして、

長く使い続けるものを大切にする京都の暮らしの感覚。

そうしたものが込められているように思います。



京都の町家とお竈さん


京都の伝統的な町家では、台所は生活の重要な場所でした。

竈でご飯を炊き、鍋をかけ、煮炊きをする。

火を起こすためには薪や炭が必要で、その火加減を人が見ながら調理する。

現代のようにボタン一つで温度を設定できるわけではありません。

火が強ければ弱める。

弱ければ薪や炭を足す。

鍋の状態を見る。

料理の香りを感じる。

湯気を見る。

そして、料理の状態を判断する。

つまり、昔の料理には、火と向き合う技術が必要でした。

これは現在の日本料理にもつながっている大切な感覚です。



お竈さんは「料理をする道具」であると同時に「建築」でもある


私たちが使っているお竈さんを見ていただくと、一般的な厨房機器とは少し違うことに気づかれるかもしれません。

お竈さんは、既製品を置いて終わりというものではありません。

左官の技術によって、一つ一つ形をつくり、仕上げていくものです。

その意味では、料理道具でありながら、建築や伝統工芸に近い存在ともいえます。

土や耐火性のある素材を用い、火を扱う場所として形を整える。

そして、職人の手によって仕上げられる。

料理人だけでは完成しません。

左官職人の技術があって初めて、料理人が使えるお竈さんになります。



なぜお竈さんは高価なのか?


お竈さんは、一般的なコンロや厨房機器とは違い、手間と技術を必要とします。

設置する場所に合わせてつくり、火を扱える構造にし、素材を選び、左官によって仕上げる。

さらに、実際に使い始めてからも、火を入れることで少しずつ表情が変わっていきます。

そのため、既製品の調理機器とは単純に価格を比較できません。

職人の技術によってつくられる一点ものに近い存在。

それがお竈さんです。

料理をするための設備でありながら、職人の仕事そのものを見ることができる。

そこにも大きな価値があります。



店主が修業した「草喰なかひがし」とお竈さん


店主が京都で日本料理を学んだ店の一つに、「草喰なかひがし」があります。

京都・銀閣寺近くに店を構え、長年にわたり京都の日本料理を代表する店の一つとして知られてきた料理店です。

店主はそこで修業を積む中で、お竈さんを使った料理や炭火焼きに慣れていきました。

炭の状態を見る。

火の強さを見る。

食材との距離を調整する。

火の入り方を見ながら料理する。

こうした経験は、現在のますます増田の料理にもつながっています。



ますます増田にもお竈さんがあります


だからこそ、ますます増田を開業するときにも、私たちはお竈さんをつくりました。

現在、ますます増田のお竈さんでは、

ご飯を炊く。

そして、

炭火焼きをする。

という二つの大切な役割があります。

白いお竈さんの中で炭が赤くなり、その上で食材に火を入れる。

そして別のタイミングでは、その火を使ってご飯を炊く。

「火」という一つのものから、さまざまな料理が生まれます。

これは、現代の厨房機器ではなかなか味わえない、竈ならではの魅力です。



ますます増田のお竈さんは「無垢」のまま


私たちのお竈さんには、一般的な意味での塗装やコーティングを施していません。

土本来の白さ。

無垢の素材感。

その美しさをそのまま見ていただきたいと思っています。

新品のときの真っ白な美しさももちろん魅力的です。

しかし、私たちは使い込まれていくことにも価値があると考えています。



炭火を使うからこそ生まれる「跡」


お竈さんの炭火を使う部分をよく見ていただくと、少しずつ色が変化していることがあります。

シミのような跡。

炭による煤。

熱による色の変化。

そして、場合によっては細かなひび割れ。

新品の建築物だけを美しいと考えるなら、こうした変化は「傷」に見えるかもしれません。

しかし、私たちはそう考えていません。

それは、お竈さんが実際に料理をしてきた証だからです。

毎日火を入れる。

炭火で食材を焼く。

ご飯を炊く。

熱を受ける。

その繰り返しによって、少しずつ表情が変わっていく。

それは、使わなければ生まれないものです。



「新品の美しさ」と「使い込んだ美しさ」


日本には、使うほどに美しくなるものがあります。

包丁もそうです。

木の器もそうです。

釜や鍋もそうです。

そして、お竈さんもそうだと思っています。

最初は真っ白だった土の表面に、少しずつ火の跡が残っていく。

それは劣化ではなく、

料理人が積み重ねてきた時間そのもの。

だからこそ、私たちはお竈さんをきれいに保ちながらも、すべてを新品の状態に戻そうとは考えていません。

使うからこそ生まれる表情も含めて、大切にしていきたいと思っています。



お竈さんと炭火料理


炭火料理の面白さは、単純に「炭の香りがつく」ということだけではありません。

炭の種類。

炭の状態。

火の強さ。

食材との距離。

食材の大きさ。

水分量。

脂の量。

そして、焼く時間。

それぞれを料理人が見極める必要があります。

店主は修業時代からお竈さんでの炭火焼きに触れてきたため、火を見ることを大切にしています。

「何分焼けばいい」という数字だけではなく、

今、この食材にどのくらいの火が必要なのか。

それを見ながら料理します。



お竈さんで炊くご飯


そして、もう一つのお竈さんの大切な仕事が、炊飯です。

ますます増田では、栃木県のお米を使い、土鍋で炊いた炊き立ての白ご飯をお楽しみいただいています。

お米。

水。

火。

土鍋。

そして料理人の見極め。

それらが一つになって、炊き立てのご飯になります。

蓋を開けた瞬間に立ち上がる湯気と香り。

一粒一粒の食感。

噛むほどに感じるお米の甘み。

日本料理のコースの最後だからこそ、シンプルな白ご飯のおいしさを感じていただけると思っています。



京都の文化を「見る」だけではなく「使う」


京都を訪れると、寺社仏閣や町家、伝統工芸など、さまざまな歴史文化を見ることができます。

しかし、伝統文化は「見る」だけのものではありません。

使い続けることによって、次の世代へ受け継がれていくものもあります。

お竈さんもその一つだと思っています。

昔の京都の暮らしを支えた竈を、現在の日本料理店で実際に使う。

昔ながらの火の扱い方を学び、それを現在の料理に生かす。

そして、その姿をお客様に見ていただく。

それもまた、伝統を未来につなぐ一つの方法なのではないでしょうか。



ますます増田のお竈さんも、これから表情を変えていく


私たちのお竈さんも、これから何年、何十年と使い続けていけば、今とは違う表情になっていくでしょう。

炭火の跡が増えるかもしれません。

土の色が少しずつ変わるかもしれません。

新しいひびが生まれるかもしれません。

それも含めて、私たちは楽しみにしています。

なぜなら、それらはすべて、

「ますます増田で料理をしてきた時間」

だからです。



ご来店の際は、ぜひお竈さんにもご注目ください


ますます増田にお越しの際には、料理だけではなく、店内のお竈さんにもぜひ目を向けてみてください。

白く、無垢の土で仕上げられたお竈さん。

炭火によって少しずつ変化した表面。

熱によって生まれた跡。

そして、その中で炊かれる栃木のお米。

その火を使って仕上げる料理。

そこには、店主が京都で修業してきた時間と、昔から続く日本の料理文化がつながっています。

お竈さんは、単なる「古い調理器具」ではありません。

京都の暮らし。

火を扱う技術。

左官職人の仕事。

料理人の経験。

そして、日々の食事。

それらをつないできた存在です。

京都・西陣の町家にある「ますます増田」で、季節の日本料理を楽しみながら、ぜひお竈さんが刻んできた時間も感じてみてください。



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ますます増田

住所:京都府京都市上京区旧大宮通中立売上る庇町187−1

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