京都を訪れると、寺社仏閣や美しい庭園、歴史ある町並みに目を向ける方が多いと思います。
しかし、京都の文化を語るうえでもう一つ大切な存在があります。
それが、京町家です。
京都の街には、古くから人々が暮らし、商いをし、仕事を営んできた町家が残されています。
京都・西陣の「ますます増田」も、築100年以上の京町家を改装した日本料理店です。
古い建物をただ新しく改装するのではなく、京町家が持つ趣や素材の美しさをできるだけ残しながら、料理を楽しんでいただける空間へと生まれ変わらせました。
「ますます増田」で過ごす時間は、料理だけではありません。
一歩店内に入っていただいた瞬間から、京都の町家文化も感じていただければと思っています。
京町家とは?
京町家とは、京都の歴史的な市街地に建てられてきた伝統的な町家建築のことです。
特徴の一つが、間口が比較的狭く、奥に長い造りです。
京都の町では、限られた敷地を有効に使いながら、通りに面した場所で商売をし、その奥で生活するという暮らしが営まれてきました。
そのため、京町家は単なる「住居」ではありません。
商いをする場所であり、
人が暮らす場所であり、
仕事をする場所でもありました。
一つの建物の中に、京都の人々の生活と仕事が共存していたのです。
「住む場所」であり「商いの場所」でもあった京町家
昔の京町家では、通りに面した場所を店舗や仕事場として使い、その奥に生活空間が続く造りが多く見られました。
商人や職人が、そこで仕事をしながら暮らす。
お客様を迎える。
家族が生活する。
仕事と暮らしが一つの建物の中にありました。
特に西陣は、古くから西陣織をはじめとする織物産業で栄えた地域です。
職人や商人が暮らし、仕事をする町として発展してきたため、現在でも伝統的な町家や路地が残っています。
つまり京町家は、単に美しい古い建物ではありません。
京都の人々が実際に暮らし、働いてきた歴史そのものでもあります。
京町家の魅力は「自然素材」と「時間」
京町家を歩いていると、木、土、石、紙など、自然素材が多く使われていることに気づきます。
現代の建物のように、すべてを新しく、均一に仕上げるのではありません。
木は年月とともに色が深くなり、
柱や梁には長い時間の跡が残り、
土壁や床にも、その建物が歩んできた時間が表れます。
新品の美しさとはまた違う、
「時間がつくる美しさ」
が京町家にはあります。
使い込まれたものだからこそ生まれる風合い。
古いからこそ感じられる落ち着き。
それも京町家の大きな魅力です。
築100年以上の京町家を改装した「ますます増田」
京都・西陣にある「ますます増田」は、築100年以上の京町家を改装した日本料理店です。
周囲にも趣のある京町家が並ぶ一角に、私たちの料理屋があります。
建物を改装する際には、現代の料理店として必要な設備や快適さを整えながらも、京町家が持つ雰囲気をできるだけ残したいと考えました。
料理店として使いやすくすることだけを考えれば、すべてを現代的に改装する方法もあります。
しかし、それではこの建物が長い年月をかけて培ってきたものが失われてしまいます。
だからこそ、
古いものを残す部分と、現代の料理店として整える部分。
そのバランスを大切にしています。
京町家の中で味わう日本料理
料理店として必要なことはもちろんあります。
厨房は効率よく動かなければなりません。
お客様には快適に過ごしていただかなければなりません。
衛生面や安全面も現代の基準に合わせる必要があります。
その一方で、私たちが残したかったのは、
「ここでしか感じられない京都らしさ」
です。
木の温もり。
町家ならではの空間の奥行き。
古い素材が持つ風合い。
静かな空気。
そして坪庭。
それらが一緒になることで、一般的な新築の日本料理店とは違う、落ち着いた時間を過ごしていただける空間になっています。
ますます増田の坪庭
「ますます増田」の店内には、坪庭があります。
坪庭とは、建物の中に設けられた小さな庭のことです。
一見すると小さな空間ですが、京町家の中ではとても大きな役割を持っています。
建物の奥に光や風を取り込み、室内に自然を感じさせてくれます。
そして何より、
季節の変化を身近に感じられる場所
でもあります。
苔と古材、石がつくる静かな庭
ますます増田の坪庭は、華やかさを前面に出した庭ではありません。
丁寧に手入れされた苔。
年月を感じさせる石。
古材。
そして、それらを包み込むような静かな空気。
そうしたものが組み合わさっています。
雨の日には苔がしっとりと濡れ、
季節によって光の入り方が変わり、
時間帯によって庭の表情も変わります。
大きな庭園ではありません。
しかし、小さいからこそ、料理を召し上がりながらふと目を向けたときに、自然を近くに感じることができます。
なぜ京町家には坪庭があるのか
京町家は、間口が狭く奥に長い造りになっているため、建物の奥に光や風を取り込むことが重要でした。
そこで、建物の途中に庭を設けることで、採光や通風を確保するとともに、生活の中に自然を取り入れてきました。
つまり坪庭は、単なる装飾ではありません。
建物と自然をつなぐための空間でもあります。
京都の人々は、限られた都市空間の中でも、庭や光、風を取り込みながら暮らしてきたのです。
「苔・石・古材」に感じる日本の美意識
坪庭を眺めていると、派手なものがなくても美しいと感じることがあります。
苔。
石。
木。
それぞれが目立とうとするのではなく、全体として静かに調和している。
これは、日本文化にある侘び・寂びにも通じる美意識です。
新しいものだけを美しいとするのではなく、
古くなったもの。
傷のあるもの。
時間を重ねたもの。
そうしたものの中にも美しさを見つける。
ますます増田では、そうした日本らしい感覚も、店内の空間から感じていただければと思っています。
京町家と日本料理は、実はよく似ています
京町家と日本料理には、共通する部分があります。
どちらも、
季節を大切にすること。
自然素材を生かすこと。
派手さよりも調和を大切にすること。
細部まで丁寧に仕上げること。
そして、
時間の積み重ねを大切にすること。
料理は毎月変わります。
庭も季節によって変わります。
光の入り方も変わります。
そして、木や土などの建物も、年月とともに少しずつ変化していきます。
だからこそ、料理と京町家は自然に調和すると私たちは考えています。
建物も料理の一部
「ますます増田」では、京町家を単なる料理の背景とは考えていません。
建物そのものも、お食事の一部です。
料理を待つ間に、木の柱を眺める。
坪庭を見る。
苔や石の表情を感じる。
季節によって変わる光を見る。
そうした時間も含めて、日本料理を楽しんでいただきたいと思っています。
五感で感じる京都
日本料理は、味覚だけで楽しむものではありません。
料理の香り。
器の手触り。
盛り付けの美しさ。
炭火の音。
季節の食材。
そして、食事をする空間。
ますます増田では、京町家という空間も含めて、五感で京都を感じていただければと思っています。
料理を召し上がりながら、ふと坪庭を見る。
その瞬間に、
「京都に来たんだな」
と感じていただけたら、それも私たちにとって嬉しいことです。
西陣で感じる、もう一つの京都
西陣は、京都の中でも長い歴史を持つ地域です。
西陣織をはじめとする織物文化が根付き、職人や商人が暮らし、仕事をしてきました。
現在も、昔ながらの町家や路地が残り、京都の中心部の中でも比較的落ち着いた雰囲気があります。
観光地を巡るだけではなく、こうした町を歩いてみると、また違った京都の姿に出会うことができます。
その西陣の町家の中で、季節の日本料理を味わう。
それも京都旅行の楽しみ方の一つではないでしょうか。
100年以上の時間を、これからへ
私たちの京町家は、すでに100年以上の時間を過ごしてきました。
この場所で暮らした人。
ここで仕事をした人。
この町を歩いてきた人。
私たちが知らない多くの人々の時間が、この建物には積み重なっています。
そして現在、この場所は日本料理店として、新しい時間を刻んでいます。
木はこれからも少しずつ色を変えていくでしょう。
坪庭も季節ごとに表情を変えていきます。
そして、ここで食事をされたお客様の思い出も、この建物の新しい歴史になっていきます。
だから私たちは、この京町家を「古い建物」とだけは考えていません。
今も人を迎え、料理を生み、新しい歴史をつくっている生きた京都の文化だと思っています。
京都・西陣「ますます増田」で京町家を感じる
「ますます増田」では、築100年以上の京町家を改装した空間で、季節の食材を使った月替わりのおまかせ料理をお楽しみいただいています。
趣のある京町家が並ぶ西陣の町。
その一角にある料理屋。
店内に残る京町家の雰囲気。
丁寧に手入れされた坪庭。
苔、石、古材。
そして、季節ごとに変わる日本料理。
料理だけを目的に来ていただくのももちろん嬉しいことですが、ぜひご来店の際には、少しだけ顔を上げて、建物や庭にも目を向けてみてください。
そこには、料理とはまた違った「京都」があります。
100年以上の時間を重ねた京町家で、季節の日本料理を味わう。
それは、京都の歴史と食文化を同時に感じていただける、ますます増田ならではの時間です。
ますます増田
住所:京都府京都市上京区旧大宮通中立売上る庇町187−1
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