観光の前に知っておくと面白い京都文化10選|元祇園甲部芸妓の女将が伝えたい、もう一つの京都|京都・西陣・今出川エリア「ますます増田」

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京都を訪れると、清水寺や金閣寺、伏見稲荷大社などの寺社仏閣、祇園の町並み、舞妓さんや芸妓さんの姿など、さまざまな京都の文化に出会うことができます。

けれども、京都には、観光地を訪れるだけでは分からない文化もたくさんあります。

町家のつくり。

花街の文化。

西陣織。

五山送り火。

白味噌。

出汁。

旬を大切にする日本料理。

季節の行事。

そして、人を迎えるおもてなし。

こうした一つひとつを少し知ってから京都を歩くと、今まで何気なく見ていたものが、少し違って見えてくるかもしれません。

私自身、京都・祇園甲部で14年間、舞妓、そして芸妓として勤めてきました。

現在は京都・西陣、今出川エリアで、大将と一緒に日本料理店「ますます増田」を営んでいます。

花街で学んだこと。

京都で暮らす中で感じてきたこと。

そして現在、日本料理店の女将としてお客様をお迎えする中で感じること。

今回は、京都を訪れる方にぜひ知っていただきたい「もう一つの京都」を、10のテーマに分けてご紹介します。



1.舞妓・芸妓と京都の五花街


京都を訪れた方が、一度は目にしてみたいと思うものの一つが、舞妓さんや芸妓さんではないでしょうか。

京都には、

  • 祇園甲部
  • 宮川町
  • 先斗町
  • 上七軒
  • 祇園東

という五つの花街があります。

舞妓は、舞踊や三味線、唄などの芸事を学びながら、芸妓になるための修業をしている段階の女性を指します。

そして芸妓になると、それまで身につけてきた芸事をさらに深め、お座敷などでお客様をおもてなしします。

華やかな着物や髪型だけを見ると、美しい京都の風景の一つに見えるかもしれません。

しかし、その背景には、毎日の厳しいお稽古や、先輩から後輩へと受け継がれてきた作法、芸事、季節のおもてなしがあります。

私自身も祇園甲部で14年間、舞妓、そして芸妓として過ごしました。

花街は、舞妓や芸妓だけで成り立っている世界ではありません。

踊り、三味線、唄、着物、髪結い、着付け、料理、茶屋など、多くの人々の仕事と技術によって支えられています。

伝統文化とは、誰か一人が守るものではなく、多くの人がそれぞれの役割を担いながら、次の世代へつないでいくものなのだと、私は花街で学びました。

京都で舞妓さんや芸妓さんを見かけたときには、その華やかな姿だけではなく、その後ろにある長い修業や文化にも思いを向けていただけたら嬉しく思います。



2.京町家とは?「うなぎの寝床」と坪庭



京都の町を歩いていると、間口が狭く、奥に長く続く建物を見かけることがあります。

これが、京都を代表する建築の一つである京町家です。

昔の京都では、町家は単なる住居ではありませんでした。

商売をする場所であり、仕事をする場所であり、家族が暮らす場所でもありました。

特に西陣では、織物に関わる職人や商人が町家で暮らしながら仕事をしてきました。

そのため、町家には京都の暮らしや商いの歴史が詰まっています。

間口が狭く奥に長い形から、京都の町家は「うなぎの寝床」と表現されることもあります。

そして、京町家の奥には坪庭が設けられていることがあります。

小さな庭ですが、単なる飾りではありません。

建物の奥に光や風を取り込む役割があり、同時に、限られた空間の中で自然や季節を感じるための場所でもありました。

雨が降れば苔が濡れ、夏には緑が深くなり、秋には少しずつ景色が変わる。

大きな庭園とは違う、町家ならではの自然との付き合い方です。

「ますます増田」も、京都・西陣、今出川エリアにある築100年以上の京町家を改装した日本料理店です。

店内には坪庭があり、古い木材の風合いを残した空間の中で、日本料理を楽しんでいただいています。

料理だけではなく、建物そのものからも京都を感じていただければと思っています。

京都を訪れた方からよく聞かれる質問の一つが、


「舞妓さんと芸妓さんは何が違うのですか?」

というものです。

舞妓は、京都の花街で舞踊や三味線などのお稽古をしながら、芸妓になるための修業をしている段階の女性を指します。

そして芸妓になると、さらに芸事を深め、お座敷などでお客様をおもてなしします。

舞妓の華やかな衣装や髪型は、京都を代表する風景の一つです。

しかし、その華やかさの背景には、日々のお稽古や修業、先輩方から受け継いできた伝統があります。

私自身も舞妓、そして芸妓として花街で過ごしました。

観光で舞妓さんを見かけたときには、その華やかな姿だけではなく、その背景にある芸事や文化にも少し思いを向けていただけたら嬉しく思います。


3.「大文字焼き」ではなく「五山送り火」


京都の夏を代表する風景の一つに、8月16日の「五山送り火」があります。

「大文字焼き」と呼ばれることがありますが、京都では一般的に「五山送り火」や「送り火」と呼びます。

これは、単なる夏の風景ではありません。

お盆に帰ってきたご先祖の霊を再びあの世へ送り出すという意味を持つ、京都のお盆の伝統行事です。

夜の山に灯される文字や形は、

  • 大文字
  • 妙法
  • 船形
  • 左大文字
  • 鳥居形

の五つ。

それぞれの山に火が灯り、京都の夜空に美しい送り火が浮かび上がります。

お盆という日本の文化と、先祖を大切にする心、そして京都の山と町とのつながりが一つになった行事です。

実は「ますます増田」の前の通りを南へ下り、旧大宮通・中立売通のあたりから東方面を見ると、東山に灯る右大文字を見ることができます。

8月16日の送り火の時間には、タイミングが合えばコースを少し中断し、お客様にもその景色をご覧いただくことがあります。

京都で送り火を見る機会があれば、ただ「山に火が灯っている」と見るのではなく、

「今年もご先祖をお送りする日なのだな」

と、その背景にある文化にも思いを馳せていただければと思います。



4.西陣織と西陣の歴史


「ますます増田」が店を構える西陣は、京都の中でも特に織物文化と深い関わりを持つ地域です。

西陣織は、色鮮やかな糸や金銀糸などを使い、非常に細やかな技術によって織り上げられる京都を代表する伝統工芸の一つです。

西陣では、職人や商人など、織物に関わる多くの人々が暮らし、働いてきました。

そのため、西陣の町には、織物を中心とした仕事と暮らしが一体となった文化が育まれてきました。

「ますます増田」の京町家も、もともとは呉服屋さんとして使われていた建物です。

かつては、この場所で人と布との縁が結ばれていたのかもしれません。

そして今は、私たちが料理を通して、人と食との縁を結んでいます。

布を紡ぐように、人とのご縁を紡ぐ。

そして、食を通して命を紡ぐ。

そう考えると、この場所で日本料理店を営んでいることにも、不思議なご縁を感じます。

西陣や今出川エリアを歩くときには、現在の町並みだけではなく、かつてここで多くの人が織物をつくり、商いをし、暮らしていた歴史にも目を向けてみてください。



5.京都の白味噌文化


京都の食文化を語るうえで、白味噌も欠かすことのできない存在です。

京都の白味噌は、米麹の割合が高く、短期間で熟成させることで、白く、甘みのある味わいになります。

熟成が進むにつれて味噌の色は次第に濃くなり、風味や塩味も変化していきます。

京都では、白味噌を使った料理として特に有名なのが、お正月の白味噌仕立てのお雑煮です。

甘みとコクのある白味噌に出汁を合わせることで、柔らかく、どこか包み込むような味わいになります。

大将は、修業時代に京都の名店「草喰なかひがし」で料理を学びました。

そこで使われていた出町柳の島村味噌の白味噌に出会い、その澄んだ味わいと美しい白さに強く惹かれました。

「ますます増田」では、その白味噌の魅力を生かしながら、鰹と昆布の出汁だけではなく、料理に使用する野菜のヘタや皮なども活用し、野菜によっては一度煎ってから野菜の旨みを引き出します。

それらを合わせて、季節を一つのお椀にまとめていきます。

それぞれの野菜の個性を残しながら、出汁によって全体をつなぎ、白味噌の優しい甘みとコクで包み込む。

京都の白味噌文化を、私たちなりの日本料理としてお楽しみいただければと思っています。



6.日本料理はなぜ「旬」を大切にする?


日本料理を理解するうえで欠かせない言葉が「旬」です。

春には春の食材。

夏には夏の食材。

秋には秋の味覚。

冬には冬ならではの料理があります。

しかし、日本料理における季節感は、食材だけではありません。

器。

盛り付け。

色。

香り。

温度。

しつらえ。

こうしたものすべてを通して、その季節を表現します。

例えば、暑い夏には料理そのものだけでなく、器や盛り付けによって涼しさを感じていただく。

秋になれば、実りを感じさせる食材や色を取り入れる。

料理を食べながら、

「もう秋になったんだな」

「今年も夏が来たな」

と感じていただく。

それが日本料理の面白さの一つだと思っています。

「ますます増田」では、月替わりで献立を組み立てています。

その時期に最も美味しい食材を選び、その月だからこそできる料理を考えています。



7.日本料理の「出汁」はなぜ大切なのか


日本料理を支える基本の一つが「出汁」です。

鰹節や昆布などから旨みを引き出し、素材の味をつなぎ、料理全体に奥行きを与えます。

特に京都の料理では、水も重要です。

水の硬度によって昆布や鰹から出る旨みの出方は変わります。

さらに、気温や湿度、鍋の状態、火の強さなど、さまざまな条件によって出汁の状態は変化します。

大将が大切にしているのは、「何度で何分」という数字だけに料理を合わせることではありません。

その日の気候、その場所、その食材、そして料理を食べる人の状態まで考えながら、最も良い状態を見極めることです。

料理には科学的な部分もあります。

けれども、最後に必要なのは、料理人がその瞬間を見て判断する感覚なのだと思っています。

だからこそ、同じ材料を使っても、料理人によって出汁の表情が変わる。

そこに日本料理の奥深さがあります。



8.五感で楽しむ日本料理


日本料理は、味だけを楽しむ料理ではありません。

香り。

器。

盛り付け。

温度。

食感。

料理を仕立てる音。

そして、料理をいただく空間。

五感を通して一つの食事を楽しみます。

だからこそ、私たちは「料理だけが美味しければいい」とは考えていません。

築100年以上の京町家。

古材の風合い。

坪庭の苔。

季節のしつらえ。

料理を運ぶタイミング。

そして、大将や女将との会話。

それらすべてが重なって、その日の食事の時間になります。

一皿だけを思い出すのではなく、

「京都で、こんな時間を過ごしたな」

と記憶に残る食事になれば、それが私たちにとって一番嬉しいことです。



9.京都の季節行事と「季節を暮らす」という文化


京都には、年間を通してさまざまな季節行事があります。

春の桜。

葵祭。

夏の祇園祭。

お盆。

五山送り火。

秋の紅葉。

重陽の節句。

冬の年越し。

こうした行事は、単なるイベントではありません。

京都では昔から、季節の変化を暮らしの中で感じ、それに合わせて食や装い、しつらえを変えてきました。

日本料理も同じです。

「季節を食べる」という考え方があります。

春には春の苦み。

夏には夏の涼しさ。

秋には秋の実り。

冬には身体を温める料理。

季節を知ることで、料理の意味もより深く感じられます。

京都を訪れる際には、ぜひ旅行の日程に合わせて、その時期ならではの行事や食文化にも目を向けてみてください。



10.京都のおもてなしとは?「相手を思う」ということ


最後に、私が花街で学び、現在も女将として大切にしている「おもてなし」についてお話ししたいと思います。

京都のおもてなしというと、丁寧な言葉遣いや美しい所作を思い浮かべる方も多いと思います。

もちろん、それも大切です。

けれども、私が思うおもてなしの本質は、

「相手がその時間を心地よく過ごせるように考えること」

です。

会話を楽しみたい方もいれば、静かに料理を味わいたい方もいます。

料理について詳しく知りたい方もいれば、京都の文化について話を聞きたい方もいます。

必要以上に踏み込まず、必要なときにはそっとお手伝いする。

相手をよく見る。

その場の空気を感じる。

これは、私が舞妓・芸妓として花街で過ごす中で学んだことの一つです。

そして今、その経験を日本料理店の女将として生かしています。

大将が料理をつくり、私はお客様をお迎えする。

料理とおもてなし、その両方を通して、一つの時間をつくっていきたいと思っています。



京都を知ると、京都旅行はもっと面白くなる


京都には、誰もが知っている有名な観光地があります。

しかし、京都の魅力はそれだけではありません。

舞妓や芸妓。

五花街。

京町家。

坪庭。

西陣織。

五山送り火。

白味噌。

出汁。

旬。

季節の行事。

そして、おもてなし。

こうした文化を少し知ってから京都の町を歩くと、今まで何気なく見ていた風景の意味が少しずつ見えてくるかもしれません。

町家の格子を見て、

「ここにも昔の暮らしがあったのだな」

と思う。

西陣の町を歩いて、

「ここで何百年も織物が受け継がれてきたのだな」

と感じる。

夏の夜空に送り火を見て、

「京都では今も、先祖を送る文化が続いているのだな」

と思う。

そして料理を食べながら、

「この食材は、なぜ今この季節に食べるのだろう」

と考えてみる。

そうすると、京都旅行は単に「見る」だけの旅ではなくなります。



「ますます増田」で、京都を感じる食事を


私たち「ますます増田」は、京都・西陣、今出川エリアの築100年以上の京町家で日本料理店を営んでいます。

大将は料理を通して、旬の食材や日本料理の技術、食文化をお伝えしています。

私は、花街で14年間学んできた京都のおもてなしや文化について、お客様との会話を通してお伝えしています。

料理の美味しさはもちろん大切です。

けれども、それだけではなく、

「なぜこの料理が生まれたのか」

「なぜこの食材を今食べるのか」

「なぜこの器なのか」

「京都ではどのような文化が大切にされてきたのか」

そんな背景まで知っていただくことで、一皿一皿がより深く感じられるのではないかと思っています。

京都旅行の中で、寺社仏閣を巡る時間。

町を歩く時間。

そして、ゆっくりと料理を味わう時間。

そのすべてがつながって、京都という町の記憶になっていく。

「ますます増田」で過ごす時間が、皆様にとってそんな京都の思い出の一つになれば嬉しく思います。

京都・西陣、今出川エリアを訪れた際には、ぜひ観光地だけでは分からない、もう一つの京都にも目を向けてみてください。

そして、築100年以上の京町家で、季節の日本料理とともに、京都の文化やおもてなしを感じていただければ幸いです。



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ますます増田

住所:京都府京都市上京区旧大宮通中立売上る庇町187−1

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